著名春雨ブランド「龍口」、60年にわたる商標係争に幕

2013-12-30 2012年

■ 判決分類:商標権

I 著名春雨ブランド「龍口」、60年にわたる商標係争に幕
初代が42年前に和解、3年前に龍口食品公司二代目が龍口有限公司を告訴するも無罪確定

■ ハイライト
 老舗の春雨メーカーである龍口有限公司(Lung Kou Co., Ltd.、以下「龍口公司」)の経営者、李○○は同業者である龍口食品企業股份有限公司(Long Kow Foods Enterprise Corporation、以下「龍口食品公司」)の商標をコピーしたとして検察から起訴されていたが、裁判官は両社が42年前に商標の係争を巡って和解していること、さらには龍口公司の春雨の包裝からは龍口食品公司の商標をコピーする意図がみられないことから、李○○に無罪判決を言い渡した。これにより判決は確定となった。
 龍口公司のスポークスマンである趙○○によると、同社と龍口食品公司の創始者はいずれも山東人であり、1949年に台湾に移住してきた際、故郷の特産物である春雨の生産に従事するとともに、それぞれ会社を設立し、山東の故郷付近にある「龍口」を社名に入れた。
 該社(龍口公司)は当時「龍口粉絲廠」、相手方(龍口食品公司)は「龍口製粉廠」とそれぞれ命名し、その後、現社名に改名した。両社は社名に「龍口」という文字が入っているため、1968年係争に発展した後、2年後には「和解書」を交して和解し、それぞれの商標に共通する「龍口」二文字については今後争ってはならないと約定した。
 龍口食品公司は訴訟に関してコメントを出していない。
 検察の起訴状によると、龍口食品公司は1955年経済部知的財産局に対して「龍口牌及び図」の商標登録を出願して商標権を獲得している。商標の専用期限は2015年となっている。李○○の経営する龍口公司も前後して「銀鍋及び図」、「龍及び図」の商標登録を同局に出願し商標権を獲得した。
 龍口食品公司は3年前に、龍口公司が販売する「龍口食品系列(龍口食品シリーズ)」商品の包装に「龍口牌及び図」の登録商標に近似するものを使用しており、消費者の誤認混同を招くおそれがあるとして、李○○に商標権侵害の停止を要求した後、弁護士を通じて告訴を提起した。
 台中地方裁判所は罪証が十分ではないとして、李○○に無罪判決を下した。龍口食品公司はこれを不服として上訴し、「わが社は1955年に『龍口牌及び図』商標登録を行い、1999年には著名商標として認定されており、相手方が知らなかったという理由はなく、弁護士書簡を受け取った後も係争の包装を使用し続けた」と主張した。
 知的財産裁判所は調査した結果、両社は1970年に和解し、双方は今後商標に共通する「龍口」の二文字について争ってはならないと約定している上、龍口公司の包装をみると「龍口食品シリーズ」の字体を拡大したり、または太くしたりして目立たせるようにした状況はみられておらず、包装の下部には明確に「龍口有限公司出品」等の文字を標示しているため、李○○が龍口食品公司の商標権を侵害しようとする犯意があったとは認めがたいと判断した。
(2012年7月7日/聯合報/A10面)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所刑事判決
【裁判番号】101年度刑智上易字第2号
【裁判期日】2012年1月17日
【裁判事由】商標法違反等

上訴人 台湾台中地方裁判所検察署検察官
被告 李○○

前記上訴人は商標法違反等案件に係わる台湾台中地方裁判所2011年度智易字第20号、2011年11月28日第一審判決(起訴案件番号:台湾台中地方裁判所検察署2011年度偵字第3953号)を不服として上訴を提起し、本裁判所は以下のように判決を下すものである。

主文
上訴を棄却する。

一 事実要約
被告の李○○は龍口有限公司(旧社名:龍口粉絲廠)の経営者であり、「『龍口牌及び図』の商標(登録番号19087、19088号)は龍口食品企業股份有限公司(旧社名:龍口製粉廠股份有限公司)が1955年6月1日及び1964年8月1日に経済部知的財産局に対して登録出願を行ったもので、商標専用期限は2015年まで延期されており、専用期間における指定商品を春雨として商標権を取得し、現在も専用期間にある」ことを知っていた。商標権侵害の犯意によって、商標権者である龍口食品公司の同意を得ず、不詳の時点から龍口公司が販売するビーフン及び春雨等の商品包装に「龍口食品系列」という「龍口牌及び図」登録商標に類似した文字を使用しており、消費者の誤認混同を招いた虞があり、これを以て利益を得た。その後2009年8月に「龍口食品公司」がこの状況を発見し、李○○に対して商標権侵害の停止を要求したが、2010年8月現在でまだ上記商品を市場において販売していた。調べたところ、李○○に商標法第81条第3号で定める同一商品も類似する登録商標を無断で使用した容疑で、公訴を提起された。第一審裁判所で無罪判決が下された後、検察署は上訴し、第二審裁判所において上訴が棄却された。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人の主張:原判決の破棄、及び適法な判決
(二)被告の主張:上訴の棄却

三 本件の争点
(一)「龍口食品系列」等の文字が会社名に使用されたか否か。龍口公司が生産するビーフンや春雨の外包装袋に関連する文字と図の比率及び配置はどうか。その使用方法は商標として使用されているのか否か。一般消費者に誤認混同を生じさせる虞があるのか否か。
(二)被告には、主観的に同一商品に類似する登録商標を無断で使用する犯意が確かに有ったか否か。

上訴人と被告の主張(省略)

四 判決理由の要約
(一)龍口公司が生産するビーフンと春雨の外包装にある関連する文字と図の比率と配置を総合的にみると、いずれも外包装袋の中央に位置し、目立つ位置に同社が取得している「銀鍋及び図」、「龍及び図」等の登録商標図を使用しており、「龍口食品系列」の文字をわざと拡大したり、太くしたりして大衆の注目を集めようとする状況が見られず、さらに包装の最下部には明確に自社名を標示しているため、これは一般的な商取引習慣における通常の使用方法に該当し、自社名を標示しており、商標として使用していない。
(二)告訴人の前身「龍口製粉廠股份有限公司」は現在被告の李○○が代表を務める「龍口有限公司」の前身である「龍口粉絲廠」と1970年に和解しており、双方はそれぞれの商標に共通する「龍口」の二文字については今後争わないと約定した。告訴人の「龍口食品企業股份有限公司」及び被告の李○○が代表を務める「龍口有限公司」は、それぞれの前身である「龍口製粉廠股份有限公司」及び「龍口粉絲廠」の法人格とそれぞれ同一性を有し、前述した通り、該和解書の効力が告訴人及び被告に及ぶか否かに係わらず、被告の李○○は該和解書に調印したことにより、調印後40年近く双方に何ら係争もなかったという状況からみて、被告は自らが代表を務める「龍口有限公司」の前身「龍口粉絲廠」が使用していた「龍口」又は「龍口食品」の商標を使い続けても良いと信じていた。被告が主観的に告訴人の商標権を侵害していると認識していた、又は告訴人の商標権を侵害する犯意を有していたとはいい難い。
(三)以上をまとめると、本件の検察官が指摘する上訴理由は原判決を破棄する具体的な理由を構成しておらず、上訴は法律上の手続きに合わないため、口頭弁論を行わず、直接棄却判決を下す。以上から刑事訴訟法第367条前段、第372條に基づくべきと論断し、主文の通り判決を下すものである。

2012年1月17日
知的財産裁判所第二法廷
裁判長 陳忠行
裁判官 林洲富
裁判官 熊誦梅
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