高岡屋の商標争奪戦、裁判所は父への返還を命令

2013-12-30 2012年

■ 判決分類:商標権

I 高岡屋の商標争奪戦、裁判所は父への返還を命令

■ ハイライト
 報道によると、老舗の海苔ブランド「高岡屋」では3年前に創業者(父)と二代目(子)との間で経営権争奪戦が勃発し、父子が裁判所で争っているのみならず、息子の楊○欽は自ら立ち上げた「橘平屋」商標(「高岡屋」のサブブランド)で商品を販売したため、父から提訴されていた。先日、知的財産裁判所は楊○欽に対して「橘平屋」の商標権を「高岡屋」に返還するとともに、再び使用してはならない、との判決を下した。
 情報筋によると、「高岡屋」は台湾における商標権が父親の手中にあったため、楊○欽は自ら「橘平屋」を立ち上げたが、「高岡屋」のサブブランドとして位置づけたため、父親が支持する海揚国際実業股份有限公司(以下、「海揚」)の新経営陣に発見され提訴された。裁判官は楊○欽が当時、海揚の副総経理だったとしても、会社名義で「橘平屋」商標権を他社に譲渡する権利はないため、楊○欽に対して敗訴を言い渡した。
 海揚の黄君賢董事長は書面で以下のように述べている。楊○欽は現在も橘平屋の屏東工場を占拠し、さらには悪意を以って現金をすべて引き出そうとしており、これらに対して海揚は提訴している。楊○欽はこれに対して、第一審と第二審では裁判所の見解が異なっているため、引き続き上訴する意向があることのみを示している。(自由時報/2012年6月11日)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】100年度民商上字第17号
【裁判期日】2012年5月24日
【裁判事由】商標專用権侵害行為の排除等

上訴人 海揚国際実用股份有限公司(Y&C International Corp.)
被上訴人 汶萊商至盛国際有限公司(ブルネイ企業Esito International Corporation)

以上の当事者間の商標專用権侵害行為の排除等をめぐり、上訴人は2011年10月31日知的財産裁判所100年度民商訴字第14号第一審判決に対して上訴を提起した。本裁判所は2012年5月10日に口頭弁論を終結し、以下のように判決を下すものである。

主文
原判決を破棄する。
被上訴人は2010年5月1日公告第01408500号「橘平屋」商標の商標専用権者名義を上訴人名義に変更登録すべきである。
被上訴人は2010年5月1日公告第01408500号「橘平屋」商標と同一又は類似する商標を再び使用してはならない。またその他の上記「橘平屋」商標権を侵害する行為も行ってはならない。
第一、二審の訴訟費用は被上訴人が負担するものとする。

一 事実要約
註冊(登録)第01408500号「橘平屋」商標(以下、「係争商標」)は、上訴人が2009年9月21日に経済部知的財産局(以下、「知的財産局」)に登録出願した商標であるが、知的財産局が係争商標の登録を許可した時点で、商標専用権者は被上訴人になっていた。上訴人が知的財産局に対してファイル閲覧を請求したところ、被上訴人は2009年11月30日に、2009年11月27日付で締結された商標出願権譲渡同意書を以て知的財産局に標出願人の変更登録を申請し、商標出願権譲渡同意書の中の譲渡人代表者欄には「蕭○德」と記載されていることを発見した。蕭○德は上訴人の元法定代理人であったが、2009年11月13日に上訴人によって解任されている。即ち蕭○德は2009年11月27日の時点で上訴人の法定代理人ではない。被上訴人が所持する蕭○德が2009年11月27日付で上訴人を代表して締結した商標出願権譲渡同意書は、即ち合法的の代理を経たものではなく、被上訴人が無効の該商標出願譲渡同意書を以て知的財産局に商標出願人の変更登録を申請した行為により係争商標専用権の登録名義人となったことは、「法律上の原因なく利益を得たこと」に属し、上訴人の商標専用権に損害をもたらしている。且つ被上訴人の法定代理人である楊○欽は上訴人(企業)に勤務し、上訴人の会社印と代表者印を無断で捺した商標出願権譲渡同意書を以て知的財産局に商標出願人の変更登録手続きを行い、蕭○德と共同で上訴人の権利を侵害することは、上訴人の商標権を侵害する行為でもある。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人の請求:(1)原判決を破棄する。(2)被上訴人は2010年5月1日公告第01408500号「橘平屋」商標の商標専用権者を変更して、登録を上訴人に戻すべきである。(3)被上訴人に対して2010年5月1日公告第01408500号「橘平屋」商標と同一又は類似する商標の使用を禁止する。またその他の上記「橘平屋」商標権を侵害する行為も行ってはならない。
(二)被上訴人の請求:上訴を棄却する。

三 本件の争点
(1)上訴人の前法定代理人、即ち訴外人の蕭○德は董事長職をいつ解任されたのか。
(2)被上訴人の法定代理人である楊○欽が2009年11月27日に上訴人(公司)と訴外人である蕭○德の印鑑を捺して商標出願権譲渡同意書を締結した行為は、有権代理に属するか否か。被上訴人は表見代理の規定を類推適用して、法定代理人である楊○欽が2009年11月27日に上訴人(公司)と元董事長である蕭○德の印鑑を捺して商標申請権譲渡同意書を締結した行為が有効に属すると主張できるのか否か。
(3)被上訴人は、上訴人が2009年10月30日に締結した商標登録出願権訂正譲渡協議書を以て係争商標の譲渡を受けたことには法律上の原因がある、と主張できるのか否か。
(4)上訴人は、権利侵害行為の法律関係及び商標法第61条の規定に基づき、被上訴人に対して係争商標の使用、若しくは係争商標の侵害行為を行わないように請求できるのか否か。

四 判決理由の要約
(一)上訴人の前法定代理人、即ち訴外人である蕭○德は2009年11月20日安有公司(訳注:蕭○德は上訴人の法人株主である安有公司が派遣した董事)から上訴人(公司)の董事長職の解任を通知された時点で、すでに解任されている。
安有公司は2009年11月13日付で訴外人である蕭○德に董事長職を解任することを通知する台北成功郵局第1421号内容証明郵便を発送しており、2009年11月20日に蕭○德へ送達された。即ち安有公司が蕭○德に対して上訴人(公司)の董事長職を解任する意思を表明した時点で、蕭○德は上訴人(公司)の董事長職をすでに解任されており、上訴人(公司)の代理として事実上の処分及び法律行為を行う権限は無い。

(二)被上訴人の法定代理人である楊○欽が2009年11月27日に上訴人(公司)と訴外人である蕭○德の印鑑を捺して商標出願権譲渡同意書を締結した行為は無権代理に属し、且つ表見代理の規定を類推適用することはできない。
蕭○德は2009年11月20日に上訴人(公司)の董事長職を解任され、即ち2009年11月20日から上訴人(公司)の代理として法律行為を行ったり、上訴人(公司)の代理として事実上の行為を行ったりする権限は無い。つまり被上訴人の法定代理人である楊○欽が2009年11月27日に上訴人(公司)と訴外人である蕭○德の印鑑を捺して商標出願権譲渡同意書を締結した行為は無権代理に属し、法に基づいて無効であると認定する。被上訴人の法定代理人である楊○欽が2009年11月27日上記商標申請権譲渡同意書に上訴人(公司)と訴外人である蕭○德の印鑑を捺して締結した時点で、訴外人である蕭○德はすでに上訴人(公司)の董事長ではない。被上訴人の法定代理人である楊○欽は訴外人である蕭○德に対して査証するだけで、すぐに訴外人である蕭○德にはすでに上訴人(公司)の代理として事實上の行為又は法律行為を行う権限は無いという事実を知悉することができたため、被上訴人の法定代理人である楊○欽は訴外人である蕭○德には上訴人(公司)の代理として事實上の行為又は法律行為を行えない事情を知り得たと認め、民法第169条の表見代理の規定を類推適用してはならない。

(三)被上訴人は、上訴人が2009年10月30日に締結した商標登録出願権訂正譲渡協議書を以て、係争商標の譲渡を受けたことには法律上の原因が有る、と主張してはならない。
被上訴人の法定代理人である楊○欽は、上訴人が契約に基づいて係争商標の変更登録を行う義務を履行する前に、上訴人(公司)の同意を得ずに上訴人(公司)の董事長の身分を有さない蕭○德の印鑑を捺し、知的財産局に対して係争商標の変更登録を行うことはできない。即ち、被上訴人の法定代理人である楊○欽は、上記の商標登録出願権訂正譲渡協議書の法的関係に基づいて上訴人に共同で係争商標の移転登録を行うよう請求する勝訴判決が確定するまでは、被上訴人が係争商標の移転登録を受けたことに法律上の原因が有るとは認めがたい。被上訴人の法定代理人である楊○欽は無効の商標出願権譲渡同意書を以て係争商標の登録を被上訴人の名義とすることは、法律上の原因が無く係争商標登録の利益を得たことに属し、上訴人に係争商標の商標出願権地位の喪失をもたらしたため、不当得利に属する。即ち上訴人は不当得利の法律関係に基づいて被上訴人に対して係争商標の商標専用権者を上訴人名義に変更登録するよう請求することは、法に基づいて根拠が有るものに属する。

(四)上訴人は権利侵害行為の法律関係及び商標法第61条の規定に基づいて、被上訴人に係争商標の使用、若しくは係争商標の侵害行為を行わないように請求できる。
 調べたところ、楊○欽は被上訴人の法定代理人であり、職務執行上の過失により上訴人(公司)董事長の身分を有さない蕭○德の印鑑を捺し、知的財産局に係争商標の登録を被上訴人の名義としたことは、過失により上訴人の係争商標に対する権利を侵害したものであると認める。即ち上訴人は、権利侵害行為の法律関係に基づいて被上訴人に対して係争商標の商標専用権者を上訴人名義に変更登録するよう請求できる。係争商標が被上訴人の名義で登録されていることにより、上訴人には被上訴人の使用により侵害される虞があるため、即ち商標法第61条第1項の規定に基づき、被上訴人に対して係争商標と同一又は類似する商標を使用することを禁止し、被上訴人が係争商標の侵害行為を禁止することを請求できる。

以上をまとめると、上訴人は不当得利、権利侵害行為の法律関係、及び商標法第61条第1項の規定に基づき、被上訴人に対して係争商標の商標専用権者を上訴人名義に変更登録するよう請求するとともに、被上訴人に対して係争商標と同一又は類似する商標を使用することを禁止し、被上訴人が係争商標の侵害行為を禁止するよう請求することには理由があり、許可すべきである。

上記論結に基づき、本件上訴には理由がある。知的財産案件審理法第1条、民事訴訟法第450条、第78条、第463条に基づき、主文の通り判決を下すものである。

2012年5月24日
知的財産裁判所第一法廷
裁判長 李得灶
裁判官 蔡惠如
裁判官 何君豪
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