図案に大きな差異、「舒果」商標係争で王品が勝訴

2013-12-30 2012年

■ 判決分類:商標権

I 図案に大きな差異、「舒果」商標係争で王品が勝訴

■ ハイライト
 王品餐飲股份有限公司(Wowprime Corp.、以下「王品」)は傘下のレストラン及びホテルで「舒果」の二文字を商標として使用するため商標登録を出願したが、知的財産局からドリンクスタンドの商標に似ていることを理由に拒絶査定を受けた。知的財産裁判所に行政訴訟を提起したところ、裁判官は両商標が類似しておらず、役務の性質も異なると判断して、原処分及び訴願決定を取り消し、知的財産局に差し戻して判決の法的見解に基づいて再審査を行うよう命じた。
 調べたところ、知的財産局は2010年6月に商標を審査し、台北市にあるドリンクスタンド「8鮮度」の商標が王品の「舒果」より先に登録されており、両商標とも「舒果」の二文字が用いられ、類似度が高いため消費者に誤認を生じさせるおそれがあると判断し、王品に「舒果」商標の拒絶査定を下した。
王品はこの査定を不服とし、行政訴願を提起したが棄却されたため、知的財産裁判所に対して商標登録に係る行政訴訟を提起した。その中で王品は、同社の商標における「舒」という文字の「口」の部分のデザインが緑の円形で、これは心身のリラックスと健康を隠喩したものであり、また「果」という文字にある「田」のブロック部分に水色、黄色、白色が施され、自然の野菜果物が健康の源であることを標榜しており、該商標は独創的で、視覚的に鮮明であると主張している。
「8鮮度」商標の主要部分は「80鮮%」の図案であり、商標全体の3分の2を占めている。下方には色彩が不鮮明な黄色の「舒果鮮茶」と「特調你的黃金比例(貴方の黄金比をスペシャルブレンド)」という文字が組み合わされている。舒果はシンプルな文字で、商標の使用地域は台北市に限られている。
 王品側はさらに、同社は台湾全土に多数のレストランがあり、マスコミにも数多く報道され、ネットで「王品舒果餐廳」と入力して検索すると、6万件余りの資料がヒットし、王品の舒果がすでに著名商標であり、消費者に誤認させることはないと主張した。
 裁判官の判断によると、王品の「舒果」商標には特徴と強い識別力があり、「新米蘭蔬食(新ミラノ野菜料理)」という説明が付されているため、消費者は一瞥して料理を提供するサービスだと理解することができる。「8鮮度」商標における「舒果」には創意がなく、識別力も弱く、商標の主要部分ではない上、商品はテイクアウトのみなので、「舒果」レストランとは役務の性質が異なる。
 これのみに限らず、両商標は外観、呼称ともに異なり、王品の「舒果」の知名度の方が高いため、消費者が誤認することはない。裁判官は知的財産局の処分及び訴願決定に誤りがあったと判断し、それらを取り消すとともに、知的財産局に差し戻して判決の法的見解に基づき再審査を行うよう命じた。(2012年6月3日/聯合報/B1面)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】101年度行商訴字第2号
【裁判期日】2012年5月31日
【裁判事由】商標登録

原告 王品餐飲股份有限公司(Wowprime Corp.)
被告 経済部知的財産局

上記当事者間での商標登録事件をめぐり、原告は経済部による2011年11月2日経訴字第10006105560号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。本裁判所は以下のように判決を下すものである。

主文
訴願決定及び原処分をいずれも取り消す。
被告は出願第099027622号「舒果」商標登録出願案に対して、本判決の法的見解に基づき再び処分を行うものとする。
原告のその他の請求は棄却する。
訴訟費用は2分の1を被告が負担し、残りを原告が負担する。

一 事実要約
原告は2010年6月8日に本判決文の添付図1に示された「舒果」商標(以下、「係争登録出願商標」について、商標法施行細則第13条に定める商品及び役務の区分表第43類のドリンクスタンド、飲食店、軽食食堂、かき氷店、茶芸館(中国茶喫茶店)、鍋料理店、焼肉店、コーヒーショップ、バー、ビアホール、ホテル、セルフサービスレストラン、レストラン、ケータリング等役務における使用を指定し、被告に対して登録を出願した。被告が審査した結果、係争登録出願商標は本判決文の添付図2に示されている登録第1384740号「80鮮 舒果鮮茶特調你的黄金比例Percent及図」商標(以下、「引用商標」)と構成が類似しており、同じ又は高度に類似する飲食サービスにおける使用が指定されており、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるため、登録を許可すべきではないとして、2011年7月27日商標拒絶第331964号査定書を以て拒絶査定処分を下した。原告は原処分を不服として行政訴願を提起したが、経済部は2011年11月2日経訴字第10006105560号訴願決定を以て棄却した。原告はこれを不服として本裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
原告側の請求: (一)原処分及び原決定をいずれも取り消す。
(二)被告は商標登録に対して許可査定を下すべきである。
被告側の答弁:原告の請求を棄却するよう請求する。

三 本件の争点
本件商標登録の争点:原告は本件訴訟において係争登録出願商標の登録が許可されるべきであることを証明するため、出願及び訴願の手続き時に提出した原告証拠1~15を援用した他、本裁判所に原告証拠16を追加した。係争登録出願商標は2010年6月8日に登録を出願し、被告は2011年7月27日に拒絶査定の処分を下した。本件はその後2012年5月10日に口頭弁論を終結した。係争登録出願商標の出願が登録を許可されるべきか否かは、2003年5月28日改正公布の商標法で論ずるべきである。本件の争点はまさに、係争登録出願商標が商標法第23条第1項第13号の規定に違反しているか否か、登録を許可すべきではない事情があるか否かである。

四 判決理由の要約
「同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある商標は、登録を受けることができない」と商標法第23条第1項第13号規定に明記されている。

(一)商標の識別力の強弱:
係争登録出願商標と引用商標は食品、飲料品関連の商品又はレストランの役務において使用することが指定されており、間接的な方法で商品又は役務の性質、機能、品質、用途又はその他の特徴を描写することにより、関連する消費者に想像の空間を与えて商品又は役務と商標図案とを連想させるものである。「舒果」商標の図案は暗示的商標であると認めるに足る。商標登録の積極的登録要件を有するが、任意的商標、独創的商標と比べるとその識別力は弱く、弱い商標(weak mark)に属する。本裁判所は係争登録出願商標と引用商標の図案にいずれも「舒果」という文字が含まれることのみで、両者の商標図案が消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあると判断すべきではない。

(二)商標の類否及びその類似度:
係争登録出願商標の図案全体は関連する消費者に、商標図案の色が左右対称であり、視覚的に鮮明でエネルギッシュなイメージを与える。さらに独創性を具え、文字には型にはまったイメージがなく、シンプルな「舒果」の二文字に色彩と美感あふれるデザインが施されており、該商標図案は比較的強い識別力を有する。
引用商標の図案は、比較的大きな字体の「80鮮%」と不鮮明な黄色の小さな字体「舒果鮮茶」が中間に配置され、一番下に「特調你的黄金比例」という文字が補助的に組み合わされ、80%、Percent、鮮茶、特調你的黄金比例の表現は専用の範囲ではなく、「舒果鮮茶」は逆に補助的な説明となっている。「舒果鮮茶」をキーワードとしてネット検索すると、引用商標のサイトがヒットしたのは数件にすぎない。関連する消費者又はサイトはいずれも「8鮮度舒果鮮茶」を引用商標と称している。引用商標の主要部分は「舒果」ではなく「8鮮度」であると判断するに益する。係争登録出願商標と引用商標の図案「舒果」はいずれも新鮮、自然、健康又は心地よい「蔬果(野菜くだもの)」という意味を有するが、両者の商標図案の外観及び識別力は異なっている。

(三)商品又は役務の類否及びその類似度:
係争登録出願商標が提供する商品及び役務はコース料理であり、引用商標が提供する商品はコーヒー、フレッシュジュース、調味果汁、ストレートティー、調味ティー及び具入りフルーツティーであり、その役務は価格が安く、短時間で提供することを特色としており、店内でのサービスは提供しておらず、ドリンクスタンドに属する。係争登録出願商標と引用商標は商品及び役務の区分表第43類における使用を指定しているが、両者の飲食サービスの類似度は区別できるものであり、それらが経営するサービスの内容にも差異がある。両者が提供する商品と役務は、該類において提供される飲食の機能が異なり、近似又は類似の概念があると認め難く、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれはない。

(四)先権利者の多角化経営の状況:
原告が係争登録出願商標名称を以て開設した支店には、台北八徳店、南京東店、羅斯福店、桃園大同店、竹北光明店、台中中港店、嘉義文化店及び高雄中山店等の営業場所がある(本裁判所ファイル33~36頁の原告証拠10を参照)。一方、引用商標が実際に使用される地域は台北市○○区○○路122号にのみ限られ、その他の地域では使用されていない。関連する消費者は係争登録出願商標と引用商標とを誤認混同するおそれがあるとは言い難く、ゆえに引用商標の保護範囲を減縮することができる。

(五)関連する消費者の各商標に対する熟知度:
原告が提供する飲食サービスには高い品質と評価があり、すでに関連する消費者が信頼するものとなっている。関連する消費者が係争登録出願商標の存在をすでに認知しており、たとえ設立からの時間が短くても、原告が係争登録出願商標を使用する商品と役務に広く使用してきたため、関連する消費者は係争登録出願商標に高い熟知度を有し、同商標は関連する消費者が原告の提供する商品を識別する重要な標示となっており、強い商標識別力を有するとともに、引用商標と互いに区別することができる。況してや原告の王品グループは外食市場において重要な地位を占めており、係争登録出願商標は引用商標に比べて、市場で優位にある、又は知名度や業務上の信用を有しているため、関連する消費者は、係争登録出願商標をより熟知していると認めるに足る。これにより、両者の商標は関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれはなく、係争登録出願商標を保護すべきである。

(六)商品販売・役務提供の方式並びに場所:
両者の商品又は役務の販売・提供方式は異なっており、関連する消費者が同時に接触する可能性は低く、誤認混同が生じる可能性は高くない。たとえ同一又は類似する商標であっても、一般的な社会通念及び市場における取引状況に基づいて、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれはない。

(七)(係争登録出願)商標の出願人が善意であるか否か:
係争登録出願商標の主な機能は原告の商品又は役務を表彰し、他人の商品又は役務と区別させることであり、その目的は商標の識別機能を発揮させることであり、明らかに関連する消費者にその出所を誤認混同させる意図はないと認められるため、善意の使用に属することは明らかである。

(八)行政の自己拘束の法理:
係争登録出願商標と引用商標が市場においてすでに並存する事実があり、係争登録出願商標の図案と指定商品も同一又は類似に属するため、被告が係争登録出願商標の登録を審査する際には、個別のケースの本質に基づいて、合理的な同一の処分を行ってこそ、はじめて平等原則に反することがない。このため、被告は該係争登録出願商標が第29、30、32類における使用を指定する登録出願については許可しており、商標登録第1447001、1461653、1461706号が既にファイルに記録されている。ゆえに被告には正当な理由がなく、同じ係争登録出願商標の案件に対して差別待遇を行ってはならない。

係争登録出願商標が引用商標に対して関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるか否か、又は、その他の登録を許可できない理由があるか否かについては審査を待つべきであり、本裁判所が特定の行政処分の内容、即ち係争登録出願商標の登録を許可又は拒絶を行う程度には達しておらず、憲法における権力分立の原則に基づいて、被告が第一次判断を行い、行政の自己制御によって、司法審査以前の先行手続とすべきである。ゆえに本件の事実証拠は明確ではないため、審査に差し戻し、被告は前記の法律見解に基づいて再び審査、裁量を行い、本裁判所が行ってはならない。このため、原告は被告に対して係争登録出願商標の出願案に許可査定を行うよう請求することには理由がなく、棄却すべきである。

2012年5月31日
知的財産裁判所第二法廷
裁判長 陳忠行
裁判官 曾啟謀
裁判官 林洲富
添付図:係争登録出願商標及び引用商標 

添付図1(係争登録出願商標の図)
商標登録出願案第099027622号
20120531

添付図2(引用商標の図)
登録商標第1384740号
2012053101

 
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