アディダスが豪小子(ジェレミー・リン選手)の力により 商標戦で勝利

2013-12-30 2012年

■ 判決分類:商標権

I アディダスが豪小子(ジェレミー・リン選手)の力により 商標戦で勝利

■ ハイライト
 大手スポーツ用品メーカーであるアディダスが、スポーツウェアの両サイド脇下から腰までのスリーストライプス図案を商標登録出願したところ、知的財産局による拒絶査定を受けたため、知的財産局を相手取って告訴し、且つNBAのスターである林書豪選手もアディダスによる両サイドのスリーストライプスのスポーツウェアを愛用していることなど、当該スリーストライプスが著名で、且つアディダスの特有商標であると証明できる証拠を提出した。これを審査した結果、裁判官は、拒絶査定の理由がないと認定し、アディダスの勝訴、且つ登録査定をすべき旨の判決を下した。
 調べたところ、アディダスは2006年に知的財産局に対しスポーツウェア両サイドスリーストライプス図案を商標登録出願したが、拒絶され、訴願も棄却されたため、知的財産局を被告として知的財産裁判所に対して行政訴訟を提起していた。
 また、アディダスは、その商品を全世界に販売し、且つ国際的なスポーツの試合及び著名な選手のスポンサーとなっているので、著名ブランドになっていると主張した。例えば、最近、人気のあるNBAニューヨーク・ニックス(New York Knicks)所属「LINSANITY」ジェレミー・リン選手がアディダスの両サイドスリーストライプス図案がついているスポーツウェアを着た画面が国内外メディアにより放送されたため、アディダスによるスリーストライプス図案の知名度もより一層高まっている。
 アディダスも、市場調査報告を提出した。それによると、8.3割の消費者が、スリーストライプスをみると、アディダスを連想するので、このスリーストライプス図案をもって商品の出所を区分することができる。
 これに対して、知的財産局は、スポーツウェアの両サイドにラインをつけているブランドは数多くあるので、アディダスによるスポーツウェアの両サイドスリーストライプス図案は衣服の装飾図案であり、消費者がこれだけでは商品の出所を区別できず、特殊性を有しないと答弁した。
 裁判官は、アディダスは著名ブランドであり、多くの消費者がスリーストライプスを見ると、アディダスを連想すると認定した。また、知的財産局提出の資料から分かるように、多くの業者が衣服のラインを装飾図案とすることがあるが、多くは二本ラインであり、アディダスだけが三本のラインを使用していて、知的財産局より他の業者が三本のライン図案をスポーツウェアにした証拠が提出されたこともないので、アディダスによる商標の拒絶査定には理由がないとした(2012-05-30/聯合報/B1版)。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】100年度行商訴字第154号
【裁判期日】2012年05月23日
【裁判事由】商標登録出願

原告 ドイツ企業・アディダス (阿迪達斯公司)(Adidas AG)
被告 経済部知的財産局
代表者 王美花(局長)   住所:同上
訴訟代理人 王恵慈

上記当事者間における商標登録出願事件につき、原告が経済部による2011年9月27日経訴字第10006104090号訴願決定を不服とし、行政訴訟を提起したので、本裁判所は、次の通り判決する。

主文
訴願決定及び原処分を共に取消す。
被告は改めて原告による第096928407号「3-Strips underarm(the image of the clothing is not part of the application)」商標出願の登録査定を受ける審決を下さなければならない。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
原告は2007年6月15日に「3-Strips underarm (the image of the clothing is not part of the application)」商標(以下係争商標という)を改正前の商標法施行細則第13条(2010年5月4日改正付表)所定の指定商品及び役務区分表第25類の「衣服」指定商品に使用し、被告に登録出願した。被告は審査により、係争商標の全体図案が指定商品である衣服の説明に該当するので、商標法第23条第1項第2号規定を適用することは当然であると認定し、2008年7月30日に第0308902号拒絶査定書をもって拒絶査定の処分を下した。原告はこれを不服とし、訴願を提起したが、経済部により2009年2月5日経訴字第09806105360号訴願決定書で、訴願棄却の決定が下された。原告が行政訴訟を提起したため、本裁判所は2009年7月9日に98年度行商訴字第60号行政判決で前記の訴願決定及び原処分を取消した。その後、被告が前記判決の主旨により、改めて審理をしていた期間において、原告が2009年10月8日に係争図案の「点線で表示している衣服の外観図案」の権利不要求を声明した。その後、被告は、係争商標の全体図案がなお識別力を有せず、商標法第19条でいう権利不要求声明の規定に該当しないので、同法第23条第1項第1号により拒絶査定を受けるべきであると認定し、2011年4月18日に第0330303号拒絶査定書をもって拒絶査定の処分を下した。原告はこれを不服とし、訴願を提起したが、経済部により2011年9月27日経訴字第10006104090号で棄却の決定が下されたため、本裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告:1.訴願決定及び原処分を共に取消す。2.被告は原告による2007年6月15日付出願番号第096928407号(元の出願番号第096028407号)「3-Strips underarm(the image of the clothing is not part of the application)」商標登録出願事件につき、登録査定を受ける旨の処分を下す。3.訴訟費用は被告の負担とする。
(二)被告:1.原告による訴えを棄却する。2.訴訟費用は原告の負担とする。

三 本件の争点
本件商標図案は識別力を有し、商標登録を受けることができるか否か?

四 判決理由の要約
登録出願に係る商標が後天的な識別力を有するかを判断するにあたっては、出願人が提出した証拠資料をもとに、指定商品又は指定役務の特徴の差異、及び判断結果に影響を与える可能性がある各要素について、個別案件の実際の取引市場における関連事実を総合的に酌量し、審査しなければならない。もし、係る証拠をもって、登録出願に係る商標が確かに商品又は役務の出所の指示及び識別のための標識として使用され、且つ相当な人数の消費者が当該商標を商品又は役務の出所を識別する標識としている場合、登録査定を受けることができる。案件ごとに状況が異なるが、次に掲げる資料は、登録出願に係る商標がすでに識別力を有する証拠となり得るものである。(1)商標の使用方法、期間の長さ及び業界の使用状況;(2)販売量、売上げ及び市場シェア;(3)広告量、広告費用、販促イベントの資料;(4)販売エリア、市場分布、販売拠点又は展示場所の範囲;(5)各国の登録証明;(6)市場調査報告;(7)後天的な識別力を有すると認定できるその他の証拠等。

登録出願に係る商標が後天的な識別力を有するか否かを判断するにあたっては、被告による審査の時期を判断の時点とする。また一般の社会通念に基づけば、係争商標の「三本のスリーストライプス図案」が人に与える印象は、衣服の装飾性のストライプ図案であり、消費者はそれを商品の出所の指示及び識別の標識としないので、先天的な識別力を有しないと言える。

前記の使用証拠から分かるように、係争商標は、よく「adidas」及び三本のスリーストライプス商標と併合して使用されている。しかし、係争商標は1995年より今もって引き続き使用されているので、その使用期間がかなり長く、且つその広告方法についても著名な運動選手が参加する大規模な試合のスポンサーになったり、又は有名なタレントをイメージキャラクターとし、新聞及び雑誌等メディアの放送により、比較的多数の消費者が係争商標に接触しており、且つ係争商標にも「adidas」商標又は原告による商業名称「Adidas」と一定の連結が生じているので、このことは「adidas」及びスリーストライプス商標がすでに消費者に幅広く周知され、また当該商品の特定出所が原告であることを強く示している。よって、原告が長期にわたり大量の併合による使用及び幅広い販売を行なった結果、もともと装飾性効果があるだけだった係争商標図案が原告との連想をすでに消費者に生じさせていると考えられる。

その他、原告が、係争商標を使用した衣服の台湾における販売拠点は百店舗以上に達しており、台湾全土に広く行き渡っている。また、原告が提出した宣誓書及び商品カタログの写真から分かるように、係争商標を使用した衣服の2010年及び2011年間売上げはそれぞれ56,898枚、62,737枚あり、売上額も58,502,740元、62,853,360元にも達しており、相当数の消費者が、係争商標を使用した商品を購入し、その出所が原告に由来するとより一層識別できることは確かである。

前記の証拠は、係争商標がすでに台湾における関連消費者にその商品を表彰する標識になっていると認識させるに足りるものであり、且つこれをもって他人の商品と区別し、セカンダリーミーニングを取得することができているので、商標法第23条第4項の規定により、同法第23条第1項第1号の適用を排除する。

被告がヤフーサイトを検索した資料から分かるように、関連業者は確かに各色複数のストライプを横向き、斜め、まっすぐに配列したデザインを衣服商品の装飾図案としているが、衣服脇下に使用したスリーストライプス図案は見当たらない(原処分ファイル第81から84頁まで、第134、136から143頁まで参照)。スポーツウェア業者はラインをウェアの両サイドにスポーツウェアの装飾性図案としてよく使用しているが、二本の平行線が一番よく使用されていることは、ウェブページの資料が裏付けとして参考にでき(原処分ファイル第129、130、135頁参照)、それは三本のラインではない。しかし、もし三本ラインを使用しているのがすべて原告の商品である(拒絶査定ファイル第132頁参照)としても、原告が係争商標の権利範囲を、ウェアサイドの脇下から腰までの位置に表示している「三本均等幅の並行ライン」に限定している以上、ウェアの異なる位置又は方向、数量又は不均等幅のライン設計を表示することができないとその権利範囲を拡大することはできず、業界がその他の方法でラインを装飾性図案とする使用については制限がないことは当然であるので、ここに併せて説明する。

2012年5月23日
知的財産裁判所第一法廷
審判長裁判官 李得灶
裁判官 汪漢卿
裁判官 林欣蓉
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