「台湾」という商標名の争いで紅瓦厝が勝訴

2013-12-30 2012年

■ 判決の分類:商標権

I 「台湾」という商標名の争いで紅瓦厝が勝訴

■ ハイライト
台湾菸酒公司は、全久栄企業公司の商品「紅瓦厝台湾米酒」の商標に「台湾」と表示されており、消費者に台湾菸酒公司の商品と誤認混同される恐れがあるとして、訴願を提起し、全久栄商標の取消しを求めたが、全久栄企業公司が商標の取消処分を不服として、行政訴訟を提訴した。知的財産裁判所は「台湾」は地理的な名称に過ぎず、台湾菸酒公司の独自性をはっきりと示すことができないと認定し、全久栄企業公司の勝訴を言い渡したが、本件はまだ上訴できる。
 1991年台南市に創立された民営の酒造会社全久栄企業が台南帰仁地区の旧名「紅瓦厝」を酒類の商品名に使用し始め、その後2009年に「紅瓦厝米酒頭台湾RedH. TAIWAN MICHIU TOU」商標を知的財産局に出願登録し、登録を許可された。
しかし、台湾菸酒公司は「台湾」というのは社名の一部であり、全久栄企業の商標は消費者にその商品が台湾菸酒公司の商品であると誤認混同させる恐れがあるとして、知的財産局に異議を申立てたところ、全久栄企業の米酒商標は知的財産局により取消された。
一方、全久栄企業は「台湾」は地理的な名称に過ぎず、そもそも識別性を持っていないので、消費者が「台湾」という文字によって、混同する筈はないと主張した。さらに、全久栄企業は、台湾菸酒公司が市場を独占しようとし、「一方的」に「台湾」が台湾菸酒公司の専用商標であると思い込み、他人の使用を禁止することは、法的根拠を欠くと主張した。
全久栄企業はさらに、「台湾大哥大」、「台湾大車隊」、「台湾高鉄」などを例として、いずれも「台湾」という文字に営業種目をつけているが、会社又は商品が台湾から来たことを表彰するだけで、台湾菸酒公司との特定の連想をさせるものではないと主張した。
知的財産裁判所は、台湾菸酒公司が「台湾菸酒」を商標としたのは、「台湾」の二文字を単独に出願したのではなく、一方、全久栄企業の商標には「紅瓦厝」と、英語「RedH.」などが表示されているので、消費者に混同させる恐れはないと認定したので、知的財産局の原処分を取消すべきだと判決した(2012-05-14/聯合報/B1)。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】100年度行商訴字第164号
【裁判期日】2012年4月30日
【裁判事由】商標異議

原告 全久栄企業股份有限公司
被告 経済部知的財産局
参加人 台湾菸酒股份有限公司

前記当事者の間による商標異議事件について、原告が経済部による2011年10月26日経訴字第10006105160号訴願の決定を不服として、行政訴訟を提起したが、本裁判所より参加人に独立で被告の訴訟への参加を命じた上で、以下のとおり判決を下す。

主文
訴願の決定及び原処分をすべて取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
原告は2009年5月20日に「紅瓦厝米酒頭台湾RedH. TAIWAN MICHIU TOU(カラー)」(デザインされていない『米酒頭』、「台湾」、「TAIWAN MICHIU TOU」は専用対象外と表明)を商標法施行細則第13条に定める当時の商品及びサービス分類表第33類の「酒(ビールを除く)」商品への使用に指定して、被告に登録出願し、審査を経て、登録第1394899号商標として許可され(以下、「係争商標」という)、存続期間2011年1月16日から2020年1月15日までとなっている。その後、参加人台湾菸酒股份有限公司が、係争商標が商標法第23条第1項第16号の違反に該当するとして、これに対して異議申立を提起した。案件は被告による審理の結果、係争商標に前掲規定の違反がないと判断され、2010年11月12日付、中台異字第G00990322号商標異議決定書により、「異議申立不成立」の処分が下された。参加人がこれを不服として申立てをしたため、経済部は2011年4月22日経訴字第10006098700号訴願決定により、前掲処分を取消し、被告に新たに適法の処分を命じた。その後、被告が再び斟酌した結果、係争の商標は商標法第23条第1項第16号規定違反と判断し、2011年7月21日中台異字第G01000483号商標異議決定書により、係争の商標を取消す処分をした。原告がこれを不服として、訴願を提起したところ、経済部が2011年10月26日付、経訴字第10006105160号決定により、申立を棄却したが、原告はなお承服できないため、本裁判所に行政訴訟を提起した。
本裁判所は行政訴訟法第42条第1項の定めにより、職権により参加人に独立で本件被告の訴訟への参加を命じた。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の主張:1.訴願決定及び原処分をすべて取消す。2.訴訟費用は被告の負担とする。
(二)被告の主張:1.原告の訴えを棄却する。2.訴訟費用は原告の負担とする。

三 本件の争点
係争の商標が、商標法第23条第1項第16号の規定の登録できない事由に該当しているか。

四 判決理由の要約
本件の争点は、商標法第23条第1項第16号の規定に該当する登録できない事由が存在するか否かである。ここに、以下のとおり分析した。

いわゆる「特定名称」とは、商号その他団体が設立されるときに名付けて、他の法人、商号または団体とを区別し、独立主体の称呼として表すものである。法人、商号またはその他団体の全体名称のうち、業種あるいは組織形態を表す文字は、特性を表すことによって他者と区別するものではない。特定名称でなくても、業種または組織形態以外の説明文字がその特性を表すので、他者との区別に足りない場合も特定名称に該当しない。特定名称になるものは、その名称全体を観察するほか、法人その他団体が外部に対して独特の主体地位として顕在させ、関連事業者又は消費者が、他の法人、商号あるいは団体の称号とを区別できるかによって、その特定名称であるか否かを判断すべきである。

全体名称の文字から業種または組織形態を表す部分を取り除いただけで、それを特定名称とすることは、前掲条文による不正競争を防止し、誤認を防ぐと同時に他者の会社名を保護し侵害を受けないようにする趣旨に沿わないことから、適法とはいえない。さらに、参加人の名称「台湾菸酒股份有限公司」は、「台湾」が地域名、「菸酒」が業種、「股份有限公司」は組織の形態を説明する文字に当たる。前記それぞれの単独部分は参加人を他の法人と区別して独自な主体位置を説明するには足りず、被告及び参加人はその名称から業種、組織形態を表す「菸酒」、「股份有限公司」を取り除いた後「台湾」がすなわち参加人の名称を特定する部分だと主張している。しかし、前述名称から「業種」と「組織形態」とを取り除くという硬直した方法により特定名称を判断した場合、前記会社の特定名称ともに「台湾」を含んでいるのに、前述した多くの企業がどのように区別して外部に対して主体の独自性を表しているかを考えると、全体名称の文字から業種または組織形態を表す部分を取り除き、これを特定名称に認定することが適法ではないことは明らかである。さらに、原告及び参加人が提示した証拠資料によれば、関連メディアとも「台湾菸酒公司」または「台湾菸酒」を使用して、消費者に報道の対象は参加人であることを消費者に告知していて、消費者らも「台湾菸酒」を参加人の名称として認識している。原告より提出された会社のウェブサイト資料によると、参加人は「台湾菸酒公司」または「台湾菸酒」を社名の称呼の報道または表示を特定しており、参加人は自らの販売商品に「TTL台湾菸酒」を使用している。(そのうち、TTLは参加人の英語の名称Taiwan Tabacco & Liquar Corporationの略称)を商標として、商品の出所を表していることから、参加人の社名の特定部分は「台湾」だけではなく、「台湾菸酒」の4つ文字であることが明らかである。

係争の商標は主に上から下に配した赤色図案枠内部にある中国語「紅瓦厝」と、外国語「RedH.」と大きい書体で表示した「米酒頭」、さらに「米酒頭」の右側に「紅瓦厝」に相当する太字の外国語「台湾(簡体字)」、「TAIWAN MICHIU TOU」とを合わせて構成されている。そのうち、「米酒頭」と「台湾」と「TAIWAN MICHIUTOU」は原告が専用しないと声明していたことから、係争の商標と参加人名称の特定名称には同じところはなく、よって、係争の商標には商標法第23条第1項第16号の定めを適用できない。

前述とおり、係争の商標は商標法第23条第1項第16号の規定に違反しておらず、被告が商標登録を取消処分すべきとした決定は妥当でない。

2012年4月30日
知的財産裁判所第1法廷
審判長 判事 李得灶
判事 汪漢卿
判事 林欣蓉

五 関連条文の抜粋
商標法第23条
商標は以下に掲げるいずれかの事由に該当するものは、登録することはできない。
十六、著名の法人、商号その他団体の名称が含まれていて、公衆に混同誤認させる恐れがあるもの。
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