実用新案訴訟事件におけるネット上証拠の日時情報に関する認定

2025-09-17 2025年

■ 判決分類:特許実案意匠

I 実用新案訴訟事件におけるネット上証拠の日時情報に関する認定

II 判決内容の要約

知的財産及び商事裁判所民事判決
【裁判番号】113年度民專訴字第9号
【裁判期日】2025年1月9日
【裁判事由】実用新案権侵害排除等

原告 林柏青
   陳憶慈
被告 睿能創意股份有限公司(Gogoro Taiwan Limited)
法定代理人 姜家煒
被告 陸學森(Horace Luke)

上記当事者間における実用新案権侵害排除等事件について、本裁判所は2024年12月9日に口頭弁論を終結し、次のとおり判決する。

主文
原告の訴え及び仮執行宣言申立てをいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
1.原告は係争実用新案の実用新案権者である。
2.被告は係争製品の製造、生産、販売の申し出及び使用を行っている。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の主張(請求の趣旨):
1.被告は原告に対し、連帯して金100万新台湾ドル及び起訴状副本送達の翌日から支払い済みまで、年5分の割合による金員を支払え。
2.被告は直接的又は間接的、自ら又は他人に委託して、係争実用新案を侵害する物品を製造、販売の申し出、販売、使用すること、又はこれらを目的として輸入することを一切してはならない。
3.被告は係争実用新案を侵害する原料、器具、半製品及び完成品をすべて廃棄しなければならない。
4.第一項の請求について、原告は担保を条件とする仮執行宣言を求める。
(二)被告の主張(請求の趣旨に対する答弁):
原告の訴え及び仮執行宣言申立てをいずれも棄却する;不利な判決を受けたときは、担保を条件とする仮執行免脱の宣言を求める。

三 本件の争点
(一)実用新案権侵害の部分:
係争製品は係争実用新案の請求項1、2、3、4の文言上の範囲に入り、文言上の侵害を構成するのか。
(二)実用新案に係る有効性の部分:
係争実用新案の請求項1、2、3、4には取り消すべき事由があるのか。
(三)原告が被告に対して係争実用新案の侵害を排除し、販売する係争製品を廃棄するよう請求し、被告公司に対して損害賠償を支払うよう請求することに理由はあるのか。理由があるのならば、損害賠償の金額はいかに算出すべきか。

四 判決理由の要約
1.係争実用新案には取り消すべき事由がある
乙1号証(原文は「乙証1」)は113年度北院民公泠字第900070号公証書類正本であり、その内容は「URS」Facebookファンページが2020年2月29日に「セパレート型ウインドシールド」の販売を発表した掲載文であり、公開発売日は係争実用新案登録出願の日である2020年9月10日より早く、係争実用新案の先行技術だといえる。
乙1号証には係争実用新案の請求項1「当該支持フレーム本体には、複数の固定孔を設けた一つの底座を有し、ダッシュボードの既存の組立ボルトでダッシュボード底部に取り付けることができ、当該底座の左側と右側にそれぞれ上に向かって湾曲して前方に伸びる支持アームが設けられ、当該両支持アームはダッシュボードの両側から出て、さらにダッシュボードの前方に伸び、当該両支持アームの前端にはそれぞれ一つのネジ孔が設けられ、当該ネジ孔はネジ固定部品に合わせてウインドシールドを固定することができる」と同じ技術的特徴が開示されている。
乙1号証は係争実用新案の請求項1が新規性を有しないことを証明できる。係争実用新案の請求項1はその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が乙1号証の技術内容に基づいて容易に考案できるため、乙1号証は係争実用新案の請求項1が進歩性を有しないことを証明できる。

2.係争実用新案が進歩性を有するとする原告の主張に対する意見
原告は、乙1号証のFacebookページ資料と蝦皮購物(Shopee)サイトの資料をキャプチャした日時は係争実用新案登録出願の日より遅く、乙1号証は係争実用新案の請求項1が新規性、進歩性を有しないと証明するに足りない云々と主張している。しかし調べたところ、原告がいうところの日付は公証日であり、Facebookページの公開日ではない。乙1号証の公証書類の後ろに添付されているFacebookページは公開日が「2020年2月29日」であり、その日付はFacebookの文章をアップロードすることでコンピュータが自動的に生成したタイムスタンプであり、当該文章の発表日時には「編集」の図が見られず、即ち乙1号証のFacebook資料は2020年2月29日に公開された後、変更の編集はされておらず、当該Facebook公開日が係争実用新案登録出願の日より早いことを証明するに足る。さらに乙1号証の後ろに添付されている蝦皮購物のサイト画面を照らし合わせたところ、商品レビューの日付は2020年4月11日、2020年3月3日であり、これらのレビューの日付も係争実用新案登録の出願の日よりも早く、乙1号証のURS「セパレート型ウインドシールド」販売公開の日付と商品レビューの日付が、係争実用新案登録出願の日より早いことを証明するのに十分であり、原告が公証日を以って乙1号証の公開日と認定することは誤解であり、その理由は採用するに十分ではない。
原告はさらに、乙1号証の購買日及び包装開封日はいずれも係争実用新案登録出願の日より遅く、係争実用新案登録出願の日より前に係争実用新案の請求項1の特徴1B(訳注:即ち「砂塵、雨水を避けるウインドシールド」という特徴)がすでに公開されていること、及び係争実用新案請求項1が新規性、進歩性を有しないことを証明することは難しい云々と主張している。しかし調べたところ、Facebook公開情報は訴外人によって2020年2月29日に掲載されたものであり、Facebookの情報において蝦皮プラットフォームの購入リンクが提供されており、Facebookに掲載された商品と実際に購入された商品が同じ構造ではないとは言い難い。またFacebookのコメントと蝦皮の商品レビューの内容から、購入した商品と掲載内容が異なる、及び掲載商品は同じ構造ではないという疑義は見受けられず、原告の主張は採用するに十分ではない。

以上をまとめると、被告が提出した乙1号証は係争実用新案の請求項1乃至4が新規性、進歩性を有せず、係争実用新案には取り消すべき事由があることを証明するに十分である。知的財産事件審理法第41条第2項規定により、原告は被告に対して実用新案権を主張してはならない。したがって、原告が被告に対して係争実用新案侵害の排除とすでに製造した物品の廃棄を請求し、被告に連帯で損害賠償を請求することには理由がなく、棄却すべきである。本件のその他の争点(係争製品が係争実用新案の実用新案権の範囲に入るか否か、被告に係争実用新案の侵害の故意又は過失があるか否か、損害賠償額がいくらか)については逐一論駁する必要はないことをここに述べておく。

以上の次第で、本件原告の請求には理由がなく、知的財産事件審理法第2条、民事訴訟法第78条により、主文の通り判決する。

2025年1月9日
知的財産第二法廷
裁判官 李維心

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