特許無効審判請求事件の各証拠関連性の認定に関して
2013-12-30 2012年
■ 判決分類:実用新案権
I 特許無効審判請求事件の各証拠関連性の認定に関して
一、当事者が、数件にわたる関連証拠をもって、同一の要証事実を主張するにあたっては、各証拠の関連性について全体的に総合判断をしなければならず、個別の証拠だけでもって、その証拠能力又は証拠力をそれぞれ斟酌することはできない。それ故、証拠力の判断は、要証事実を証明することができるか否かについての証拠全体を審理しなければならない。例えば、証拠には統一発票、刊行物、写真、カタログ及び実物等があり、それぞれ作成期日、発行期日、撮影期日、印刷期日または製造期日等がついているが、各証拠に要証事実との関連性がなければ、証拠力がないことになる。
二、無効審判請求添付9、10は、参加人による2010年6月18日付無効審判請求理由補充書で提出された「UB-2100ECK」、「UB-3100ECK」クリーナーの実物写真である。原告は、無効審判請求添付9及び添付10の実物写真の外観と添付2との対比を行った後、その外殻形状、サイズ、プレート、掲示パネルのサイズ、フィルター、収束リング、捕じんパックのいずれも異なっているので、無効審判請求添付9及び添付10は、無効審判請求添付2と相互の関連証拠となり得ない云々と主張した。無効審判請求添付2のカタログと無効審判請求添付9又は10の実物写真を調べたところ、二者は、プレートの版面にある商標及び文字のレイアウトが一致しておらず、掲示パネルと筒体のスペース比率も異なり、底板及び捕じん筒のスペース比率も一致しないことが確認され、被告及び参加人も前記機器外観の比較相違点について争っていない。参加人は、本裁判所による99年度民専訴第215号民事訴訟事件において次のとおり主張した。商標印刷メーカーが一社だけではなく、どの会社でも手作業でシールを貼り付けるので、位置、サイズが異なるが、係争構造と同一であることは、知的財産局の職員による実地検証で判明されている。製品の機種は国内向及び海外向に分かれているが、被証7カタログの機種はすでに販売し、知的財産局による実地検証に供するために、第三者から借りたものである。カタログにある機種は海外向であり、写真を撮ったものは国内向の機種であるので、プレートが異なるわけである。カタログにあるプレートは、被告会社(即ち本件参加人)によりパソコンで作成され、手作業で貼り付けられたものである。また、カタログにある図面も修正され、且つ角度が異なり、プレートの表示位置が確かに異なるほか、参加人が本件無効審判請求手続きにおいて提出した無効審判請求添付2の型番も参加人が前記の民事訴訟において係争実用新案の有効性を抗弁し、提出したカタログの内容と異なり、つまり参加人が製造、販売した機器のプレートは機器本体だけに貼り付けられていて、且つ参加人が自ら作成したものであることから、置き換え、変換されやすい。また、それが別件の民事訴訟及び本案において提出の製品カタログと一致しておらず、参加人もカタログの図面は修正したものであると自ら認めたので、客観的な証拠により証明されてこと、始めてそれが無効審判請求添付9、10の実物と相互の関連証拠となり得ると認定することができる。本件被告は、無効審判請求の審査段階において、無効審判請求添付9、10の実物を確認するために、2010年4月22日に、参加人会社で「UB-2100ECK」、「UB-3100ECK」クリーナーの検証を行った。しかし、参加人が、現場で提出した機器型番は前記のクリーナーと一致しなかった。そこで、被告は、再度2010年7月22日に参加人会社で検証を行い、2010年7月22日実地検証記録で次のように記録した。「検証した『自動掃除装置』図面と2010年6月18日付理由補充書に添付された写真とは同一であり、型番はUB-2100ECK及びUB-3100ECKである。…」云々。しかし、調べた結果、実地検証した機器のプレート写真のとおり、型番「UB-2100ECK」実物の規格はAMP12であり、型番「UB-3100ECK」実物の規格は60HZである。無効審判請求添付2カタログでは、型番「UB-2100ECK」の規格はAMP9.6であり、型番「UB-3100ECK」の規格は50HZであると記載されているので、その規格が著しく異なっている。参加人は、前記規格が異なっているのは各国の異なる電圧、周期に応じたためであると抗弁したが、製品の販売にあたって、もとより各国の異なる電圧、周期に応じて、異なる型番、規格で対応するので、同一型番の実物とカタログの規格が一致して、始めて商業の取引慣習に合致するものである。参加人の抗弁は採用に足りぬものである。
三、無効審判請求添付2のカタログに記載された型番「UB-2100ECK」、「UB-3100ECK」製品の図面及び規格を総合的に観察した結果、無効審判請求添付9、10の機器外観及び2010年7月22日に実地検証した実物の規格とは一致しておらず、参加人が自ら製造し、且つ任意に置き換えできるプレートに表示されていた型番と同一であることだけをもって、直ちに両者が相互に関連性があるとは認定し難い。それ故、無効審判請求添付2と無効審判請求添付9、10とは関連性があるとは認定し難い。被告による無効審判請求添付2と添付9、10及び2010年7月22日付実地検証の「自動掃除装置」とは関連性があるので、添付2の製品カタログ公開期日をもって、添付9、10写真の実物及び2010年7月22日に実地検証した「自動掃除装置」実物が早くから係争実用新案の出願日(2008年1月17日)の前、すでに公開されていた事実があることを証明できる参考資料になり得るとの認定は、適切を欠くものである。【資料元:知的財産局】
II 判決内容の要約
上記当事者間の実用新案無効審判請求事件につき、原告は経済部による2011年4月27日経訴字第10006098850号訴願決定を不服として、行政訴訟を提起した。本裁判所は、参加人に対して被告の訴訟に独立参加することを命じ、以下のように判決を下すものである。
以上をまとめると、参加人が提出した引例資料のいずれも係争実用新案が進歩性を有しないことを証明できず、現行特許法第94条第4項の規定に違反しないことから、もとより無効審判請求不成立の審決を下すべきであるのに、被告が「無効審判請求成立、実用新案権を取り消すべきである」との処分を下したことは法においても適切を欠くものである。また、訴願決定が指摘もなく、維持したことも妥当性を欠くことである。それ故、原告が訴願決定及び原処分の破棄を請求したことには理由があり、許可されるべきである。
以上を総じると、原告の訴えには理由があり、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文の通り判決する。