2016年国家発明創作賞、省エネ技術が主流に

J170425Y1 2017年5月号(J213)
    知的財産局のニュースリリースによると、4ヵ月にわたって「2016年国家発明創作賞(National Invention and Creation Award)」の審査が厳正に行われた結果、発明賞の金牌6点、銀牌20点、創作賞の金牌6点、銀牌12点、合計44点に上る優秀な専利(訳注:特許、実用新案、意匠を含む)作品が選抜された。今回の受賞リストをみると、産学研界が共同開発した専利が少なからず含まれ、国内外の企業に技術移転又は実施許諾される比率が往年より高くなっている。ここから政府の産学研界提携を推進する措置が功を奏しており、発明者・考案者・創作者が専利の商品化と商業化を重視するようになりつつあることがうかがわれる。
    今回の受賞作品は多元化されており、グリーンエネルギー技術、バイオ医療、スマートマシン等の分野をカバーしている。革新性と高い実用価値を有するだけではなく、市場潜在力や大きな商機もそなえている。
一.グリーンエネルギー技術、省エネ設計が主流に
    わが国の大気汚染は悪化しており、化学工場の排気がその原因の一つとなっている。張榮興氏が開発した「向流ガス爆轟波を利用した連続化学反応法及びそれに用いる爆轟反応器(特許登録番号I448657)」が発明賞金牌を取得した。これは主に爆轟を制御する技術で、石油精製工業や化学工業による開放型燃焼が環境を汚染するという問題を徹底的に解決できるというもの。本発明は石油化学コンビナートや化学工場からの揮発性有機化合物(VOC)排ガスを安全に処理し、有効にエネルギーを回収できる。本技術はすでに石油化学コンビナートの建設に採用されており、爆発事故を減らして住民の健康と安全を保障することができるほか、今後10年で相当に大量のエネルギーを回収し、二酸化炭素の排出を有効に削減して省エネと環境保護という理想を実現できる。
    発明賞銀牌を獲得した「結晶シリコンインゴット及びそれから作製されたシリコンウエハ(特許登録番号I452185)」は中美矽晶製品股份有限公司(Sino-American Silicon Products Inc.)が2011年に開発した高効率多結晶成長技術であり、初めて小さな結晶粒から成長させる方法を採用。結晶体の格子欠陥を大幅に抑制し、歩留まり率を高めて、生産コストを大幅に削減できる。本発明のシリコンウエハを用いて作製した太陽電池はコストが低く、エネルギー変換効率も高く、2012年には量産が始まっており、世界の太陽電池向けシリコン結晶成長技術の主流となっている。2016年世界の太陽電池導入量は69ギガワットで、そのうち高効率多結晶成長技術で製造された太陽電池は約50%を占め、その発電量は378億キロワット時/年に達しており、これは台湾の第四原子力発電所1.96個分に相当するもので、約2.44億米ドルの経済効果を生み出したものと推算される。
    世界各地の電子製品廃棄物を従来の回収技術で処理すると、年間に少なくとも100万トン以上の王水又はシアン化物が必要であり、適切な処理を行わないと、環境及び人類の健康に甚大な被害を与えることになる。発明賞銀牌を獲得した「剥離した金組成物及び使用方法(特許登録番号I426157)」は環境にやさしく操作が安全であるという特徴を有する。さらに効率的かつ迅速に金を回収でき、使用時に作業安全面の心配がない。電子製造業に急速に導入されれば、循環型経済の形成及び企業の社会的責任(CSR)という目標を必ずや達成することができる。環境にやさしい金剥離技術は環境保護及び科学技術開発に関する台湾の国際的イメージを向上させるのに役立つ。現在本発明の技術を用いた製品は世界五大陸へ輸出されており、25ヵ国以上が台湾から調達を行っている。
二.バイオ医療分野で新たな成長産業が発展
    国家衛生研究院(National Health Research Institutes)が開発した「ピラゾール化合物(特許登録番号I472514)」は発明賞金牌を獲得した。本発明は分子結構の最適化により開発された二型糖尿病治療薬であり、今後は二型糖尿病の治療に大きな貢献をもたらすことになるだろう。またこれは国家衛生研究院にとって初の画期的医薬品(First-in-Class)の小分子医薬品候補で、米国FDA/INDから第一相臨床試験実施を許可された成功例となっており、わが国の新薬開発史に大躍進の一頁を刻んだ。
    陳仲竹氏が開発した「陰圧式睡眠時無睡眠呼吸治療装置(特許登録番号I353831)」は開発から生産まですべて台湾人によるもので、世界で最もコンパクトなポータブル陰圧式呼吸器である。快適で静かである等の長所もそなえ、睡眠時無呼吸症候群患者が自宅や外出先で使用するのに便利であり、患者の健康とQOLを大幅に改善できる。本作品は臨床認証を受け、販売段階に入っており、台湾のバイオ産業にとって変革と高度化のための創業モデルとなっている。
    晉弘科技股份有限公司(Medimaging Integrated Solution)が開発した「ホスト、光学レンズモジュール及びそれらから成るデジタル診断システム(特許登録番号I432167)」はレンズを交換できるデジタルポータブル五官レンズで、無散瞳眼底カメラ、真皮肌カメラ、デジタル耳スコープ、眼前部レンズ、口腔鏡等が含まれ、小型化により、医師が携帯するのに便利である。また電子カルテや遠隔クラウド医療のシステムとつなげれば、僻地に医療を広め、僻地住民も都市部と同じ水準の医療を享受できる。同製品は台湾医学センター(訳注:台湾当局に認可された大型医療機関)によるIRB臨床試験を終えて欧米、日本、中国、台湾のFDA認証を受け、自社ブランド「HorusScope®」で世界50ヵ国に輸出されており、積極的に台湾ブランドを世界に広め、全世界の医療器材市場に売り込んでいく。
三.スマートマシン、科学技術とアイデアの結合
    矽創電子股份有限公司(Sitronix Technology Corp)が開発した特許「回路面積を節約できるディスプレイパネル駆動回路(特許登録番号I457906)」は、外付け蓄積コンデンサの必要数を減らすこと、さらにはフレキシブルプリント基板(FPC)上でコンデンサの実装を不要とすることによってFPCの面積を縮小でき、表面実装技術(SMT)の工程や時間を減らして、表面実装部品(SMD)コストを削減できる。これにより機体をさらにコンパクト化し、より組み合わせ易くなり、いかなる液晶ディスプレイ製品においても応用できるため、サムスン、ファーウェイ(華為)、レノボ(聯想)等の大手企業にも広く採用されている。これは台湾の駆動回路技術向上における新たなマイルストーンを築いた。
    蒙恬科技股份有限公司(Penpower Technology Ltd.)の「携帯電話用撮影ホルダー(意匠登録番号D168600)」は書類を自動撮影する技術を組み合わせた装置であり、前端(の断面)がアーチ形を呈する溝に携帯電話を設置して、自動的に名刺を撮影するアプリを開くと、後端にある名刺設置プレート上のQRコード(自動撮影スタートの図案)を読み取り、名刺又は文書を置き換えるだけで、携帯電話が次々と自動的に撮影し、迅速に大量の名刺/文書を電子データに変換して保存と管理を行うことができる。専用アプリのダウンロード件数は延べ数百万回に上っている。すでに意匠権を取得して商品化され、台湾、香港、中国、シンガポール、欧米、日本等の国・地域で販売されている。
    知的財産局によると、国家発明創作賞は2004年から開催され、今年で12年目を迎える。全国で唯一政府が主催し、国内で特許、実用新案、意匠の研究開発に従事する発明者、考案者、創作者を奨励することを主な目的とする賞で、2014年からは2年に一度の開催に変更され、1年は選抜、次の1年は授賞と宣伝が行われている。12年にわたってすでに500余点の優秀な専利作品が選抜され、発明創作の分野では代表的な賞となっている。このため、わが国の重要な科学技術と産業文物を主に収蔵している国立科学工芸博物館(National Science and Technology Museum)では2014年から知的財産局と提携し、受賞作品を系統的に収蔵、保存して展示や教育活動に活用し、一般大衆の専利に対する認識を高めているほか、国民の発明創作の足跡を見届ける証人となっている。(2017年4月)
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